書籍の価格決定の仕組みには出版産業の課題が隠れています。 海外企業による電子書籍産業への参入が日本の出版産業の商慣行を見直す契機となっています。
昨年、アメリカの通販サイト運営企業アマゾン・ドットコムが日本の電子書籍産業へ参入しました。
参入においては書籍の小売価格決定がどのように行われるのかが注目されました。
というのも、現在日本の出版産業に適用されている「独占禁止法の適用除外制度(※1)」
が電子書籍には適用されないため(紙の本と異なり在庫が発生しないことによる)。
これは出版社の小売価格決定権を認めるものですが、アメリカにはこの制度が存在せず
アマゾンが国内出版社へどのような交渉を行ってくるかが未知数でした。
配信業者であるアマゾンが決定権を持つと電子書籍の価格は大きく下がり、紙の本の売上が落ちるため出版社にとって不利益となり、
アマゾンにコンテンツを提供する出版社が減ります。
最終的にアマゾンが採用したのは、出版社が決定する契約とアマゾンが決定する契約の二パターンの方式でした
(前者については、出版社が価格を決めても現状独禁法違反にならない
“営業代行形式”を採ることで対応しています)。
現在電子書籍の価格は紙の書籍の7割程度で落ち着いています。
※1:「再販売価格維持制度(再販制)」と言う
紙の書籍において出版社が価格決定権を持つ「再販制」は多くの課題を抱えています。
そもそもは出版文化の持つ「言論の多様性」や「知識・情報の自由な流通」の保全を根拠としています。
しかし、再販制及び「委託販売制度(※2)」が、返本率の高止まりや、取次の金融機能に依存した出版社の
自転車操業などの問題を引き起こしています。
※2:書店が売れ残った本を出版社へ返品する制度(返品条件付き売買)
国内電子書籍の価格決定の仕組みは紙の出版と似たモデルで構築されつつあります。
これは独占禁止法に抵触している可能性があり、今後問題になることもありえます。
アマゾンの参入は、紙・電子を問わず出版物の価格決定について改めて考える機会をもたらしたと言えます。
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■参考・出展
(webメディア)「東洋経済online」、「マガジン航」、「NEWS WEEK」、「日経オンライン」、
「ソフトバンクビジネス + IT」(書籍)「出版データブック1945〜2000」(出版ニュース社)
【記載:2013.2 玉置智法】